「藻」が主食になる時代が来る!?



Pocket

国が主導するファンドの産業革新機構と大手商社の三菱商事は、藻を培養した食品を製造している川崎市のベンチャー企業に合わせて17億円を出資したとの報道がありました。地球上の人類のエネルギーを賄うために、WHOでは「昆虫食」を進めていましたが、ここにきて新たに「藻」からたんぱく質を摂取するという方法が出てきました。

人類を救うのが「藻」?

藻類とは、酸素発生型光合成を行う生物のうち、主に地上に生息するコケ植物、シダ植物、種子植物を除いたものの総称であるとされ、藻類全体では26,900種あるとされています(北海道大学)。大まかには水中の植物ということですが、お城のお濠(ほり)やJR総武線から見える神田川が緑色に見えるのも、植物性プランクトンである藻類によるものです。以前から、このような緑色の川や池は何とかならない物かと思っていたので、これら藻類の活用方法が徐々に発明されているということには大きな興味をそそられます。

これまで、藻類の研究では「藻類バイオマスエネルギー」というものが進んでいました。藻類に含まれるオイルを抽出し、液体燃料化しようというプロジェクトです。化石燃料や原子力エネルギーに頼ってきたこれまででしたが、次世代エネルギーとして、太陽光発電、風力発電、水素エネルギー、穀物バイオマスエネルギーがあります。藻類バイオマスエネルギーには、そのいずれにも劣らぬ優位性があるとされ、耕地面積あたりのオイル生産能力はトウモロコシのような穀物エネルギーに比べ、約700倍もの生産能力があるとされています。

藻類バイオマスとは
バイオマス(biomass=生物 bio + 物質の量 mass)とは、元来は「生物現存量」を意味します。生体活動に伴って生成するもの、または生態学の分野で植物、微生物体の有機物を物量換算した量を表わす言葉でしたが、石油ショック以降は「エネルギー源としての生物資源」の意味を含むようになりました。

バイオマスを用いた燃料は「バイオ燃料」と呼ばれ、バイオマスから得られるエネルギーを「バイオエネルギー」、または「バイオマスエネルギー」といいます。バイオマスが燃焼することにより放出されるCO2は、生物の成長過程で光合成によって大気中から吸収されたCO2です。化石資源由来のエネルギーや製品をバイオマスで代替することによって、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスの一つであるCO2の排出削減に大きく貢献することができます。近年の原油価格の高騰や地球温暖化への意識の高まり、また原子力発電所事故に起因する脱原発の動きから、新たな再生可能エネルギーとして、微細藻類が産生するオイルなどの「藻類バイオマス」の活用に注目が集まっています。

微細藻類は、一般的には水中に存在する顕微鏡サイズの藻で、その多くは植物と同様に太陽光を利用し、二酸化炭素を固定して炭水化物を合成する光合成を行い、代謝産物としてオイルを産生します。

微細藻類によるバイオ燃料は、植物由来のバイオ燃料に比べて、桁違いに生産効率が高く、またトウモロコシなどのように食品利用との競合もないため、次世代バイオ燃料として大変注目されています。今後、大量培養技術が確立されれば、日本を産油国にすることも夢ではありません。

一般社団法人 藻類産業創成コンソーシアム」より引用

 

各種作物・微細藻類のオイル生産能の比較

各種作物・微細藻類のオイル生産能の比較

バイオマス(乾燥重量)の70%、**30%が、オイルの種あるいは培養株 Chisti, Y.(2007):Biodiesel from microalgae. Biotechnol. Adv. 25, 294-306

藻類産業創成コンソーシアム平成23年度「農山漁村における藻類バイオマスファームの事業化可能性調査報告書」より

このように、これまで藻類は化石燃料の代替品として研究が進んでいましたが、ここにきて「食糧」そのものとしての研究が進んでいます。

藻類由来タンパクの生産・食品開発を手掛けるタベルモ

世界的な人口増加と新興国の経済発展による食生活の変化にともない、世界のタンパク質需要は今後大幅に増加することが見込まれています。需要の成長スピードに供給が追いつかず、2030年頃には需給バランスが崩れるとの予測もあります。

今回、株式会社産業革新機構(以下、「INCJ」)は三菱商事株式会社と共に、株式会社タベルモに対し、総額17億円を折半にて出資することを決定しました。

タベルモは、ちとせグループが2014年に全額出資して設立したバイオベンチャー企業です。今回の資本拠出により、INCJと三菱商事が新たな株主として加わり、出資比率は各々31.43%となります。タベルモは、今回調達した資金を主にブルネイにおける新工場設立に活用する予定です。

  • スピルリナはタンパク質を豊富に含む藻類で、60種類以上の栄養素を含む新時代の食品
  • タベルモは調達資金でブルネイ・ダルサラーム国に新工場を建設
  • タンパク質の需要拡大に対応すべく持続可能な供給ソースの多様化に寄与

スピルリナ(Spirulina)は、約30億年前に出現した藍藻類の一種で、幅0.005~0.008mm、長さ0.3~0.5mmの「らせん形」をした濃緑色の単細胞微細藻類です。福岡県や熊本県で栽培されている水前寺海苔は同じ藍藻類の仲間です。

スピルリナは、高温・強アルカリという他の動植物が繁殖しにくい特殊な条件の下で、強い太陽光線を浴びて育ちます。自然の繁殖力の中に、他の生物にない特性が隠されています。このスピルリナの管理培養下での量産化に世界で初めて成功した企業はDIC株式会社です。

これらの条件をいくつか満たしてスピルリナが自生しているのは、下記の湖です。

引用:「DICライフテック株式会社」より

藻類は光合成のみでの増殖が可能で、単位面積あたりの生産性が非常に高いことから、新たなタンパク質源として注目されています。特に、スピルリナはタンパク質含有量が65%(乾燥重量ベース)と圧倒的に高く、それ以外にも、ビタミン、ミネラル、食物繊維などを豊富に含む栄養価の高い新時代の食品です。

タベルモでは、このスピルリナを使い、大豆(※)の20倍程度タンパク質生産性を達成しています。
※大豆は、現行農業において最大のタンパク質生産性を誇る作物

年間1kgのタンパク質を得るのに必要な土地面積と水量

タベルモによると、「パンやめん、最終的にはハンバーグのような加工肉などさまざまな製品を作ることで、食品のベースにして幅広く活用してもらえるようにしたい」そうです。

将来的には、お濠や神田川に浮かべておくだけで、大量発生するアオコのような植物性プランクトンを除去しながら、水質改善とエネルギー生産が実現できるようなガジェットが開発されることを期待しています。

株式会社産業革新機構(INCJ)概要

所在地 :東京都千代田区
代表者 :代表取締役社長 勝又幹英
INCJ は、2009 年 7 月にオープンイノベーションの推進を通じた次世代産業の育成を目指して、法律に基づき設立された会社です。総額約 2 兆円の投資能力を有しており、革新性を有する事業に対し出
資等を行うことで産業革新を支援することをミッションとしています。
INCJ は、投資・技術・経営等で多様な経験をもつ民間人材によって運営されており、法令に基づき、機構内に設置している産業革新委員会にて、政府の定める支援基準に従って投資の可否の判断を行い、
日本の産業革新に資する投資を実施しています。